ライターの若大将と申します。
皆さんは、未だかつて「オバケにハイヒールを売った経験」がありますでしょうか?いきなりこんなことを聞いておいてなんですが、ちなみに私にもそんな経験はありません。
そして、多くの方はこの「オバケにハイヒールを売る」という文を読んだ時に「そんなの無理」「売れるわけがない」と思ったに違いありません。(もしくは「この記事を書いた人間はオカシイ」と思ったはずです)
全くその通りです、この記事を書いた人間の頭はオカシイですし、オバケにハイヒールを売ろうだなんて、到底できる話ではありません。そんなことはマーケティングのマの字を知ったばかりの大学生にも容易に想像ができることです。しかし、このような無茶苦茶なマーケティング戦略は、意外にもあなたの身の回りに潜んでいます。
webマーケティングの基本は「ターゲティング」と「キャッチコピー」
例えば、ここに実際オバケにハイヒールを売ろうと考えている勇敢(無謀)なサラリーマンが居たと仮定します。
彼は現在創業40年目の地元中小企業で営業を担当している入社5年目の新人営業マン「タキザワ」。好きな食べ物はワカメ。最近買って損したものは育毛剤。嫌いなものはまだハゲてない後輩。もちろん、こんな設定は全くもって今回の件には必要ありませんし、オバケがハイヒールを買ってくれない事実とタキザワがハゲてきていることにはなんの関係もありません。
そして、今回タキザワがハイヒールを売ろうとしているオバケはこのタイプのオバケです。
かなりクラシックなタイプのオバケ。
映画「シックスセンス」以降。世間では「一見生きている人間に見えて実はオバケ」タイプのオバケが増えすぎてしまったため。今日では私たちはオバケと生きている人間を見た目だけで見分けることは難しくなってしまいました。
しかし、今回登場していただいたオバケはまさに「古き良きオバケ」そのもの。死装束を着ているし、頭に三角形の何かしらも巻いている。そして何より足が無い。まさにオバケらしさを存分に詰め込んだオバケの中のオバケが来てくれました。ありがたい。
それでは実際に、タキザワにこのオバケにハイヒールを売ってもらいましょう。
実際にオバケにハイヒールを売ってみる
本日はお客様に自信を持ってオススメできる商品を持ってきまして
どんな商品ですか?
はい、それがこちらのハイヒールです
みてくださいこのステキな赤色、そして光沢
うわぁ、とっても綺麗ですね
はい、そうなんです、きっとこの見た目は気に入っていただけると思っていました
ただ今回はそれだけじゃないんです
と言いますと?
さらにこちらのハイヒール、実はあのNASAが最新鋭の宇宙船に使用するものと同じクッション素材を使用しておりまして
なんと従来のハイヒールよりも4倍(当社比)も歩きやすいんです!!
このハイヒールはただ美しいだけじゃなくて毎日履くこともできる!全く新しいハイヒールなんですよ!是非おひとついかがですか?
いや〜〜〜〜すっごいステキな商品ですし、この死装束と一緒に合わせてもすごいいい感じのコーディネートになると思うんですけど
私オバケなんで、足がこんな感じなんですよね
ちょっとこれではハイヒールは履けそうにないので
今回は一度持ち帰って検討させてもらいます
わかりました…ありがとうございます
ダメだった
タキザワに足りないもの。それは「ターゲティング」
残念ながらタキザワはハイヒールを売ることができませんでした。それは事実として認めるとして、やはり社会人たるもの失敗は次なる成功への糧としなくてはなりません。では今回のセールスが失敗したのは一体なぜなのでしょうか?
ところでタキザワの髪の毛が薄いことは今回の敗因とは全く関係がありません。そして、その敗因はどう考えても「売る相手を間違えた」ことに他ならないでしょう。人間の足を想定して作られたハイヒールが、古き良きオバケ特有のゆらゆらした半透明の足に合わないのは火を見るよりも明らかです。
人間向けに作られたハイヒールはやはり、人間にしか売れません。
古き良きオバケ用のハイヒールを売ってもらう
いや反対に、もしも古き良きオバケ用のハイヒールがあったと考えてみてはどうだろう。先ほどの場合はそもそもタキザワが売ろうとしていたハイヒールは人間用のハイヒールだったためにこのセールスは失敗したが、もし初めからタキザワがオバケ用のハイヒールを売っていたのであれば事態は全く違ったものになっていたはずだ。
というわけで、再びタキザワに登場してもらい、彼らにオバケ用のハイヒールを売ってもらうことにする。
お客様、本日も良いものをお持ちしましたよ
またあなたですか
というか、私一応れっきとしたオバケなんで、もう少し怖がってもらっていいですか?
申し訳ありません、私恥ずかしながら実家が事故物件ですのでオバケの方々には新鮮な驚きを感じることができなくなっておりまして…
ついうっかり、怖がるのを忘れておりました
ご実家が事故物件なんですか?私オバケだけどそういう怖そうな話は無理なので止めてもらっていいですか
失礼しました、申し訳ありません
それで今日は何を持ってきたんですか
はい、本日は美しくなりたいすべてのオバケの皆様にお届けしたい一品をお持ちしました
それがこちらです
前回と同じじゃないですか、ただのハイヒールですよね
いえ、こちらのハイヒールはただのハイヒールではなく、オバケの方々のために作らせていただいたオバケ用のハイヒールです
見た目一緒じゃない?
はい、どうにもいい感じの素材がインターネットに落ちていなかったので、このような形になりました
甘えじゃん
しかし、これは前回のハイヒールとは全く違う、全く新しい
オバケの方々向けのハイヒールです
これひとつを日々のコーディネートに取り入れるだけであなたの美しさにより磨きがかかり
あなたの「うらめしや〜」を聞きたいがために数千人が井戸の前に列を作るようになるはずです
そして最終的には、サッカー部では部長を務め、生徒会長と給食当番を兼任する。みんなの憧れの先輩から「おまえのうらめしさなんて、俺が吹き飛ばしてやるよ」と愛を囁かれ、幸せな人生を送ること間違いなしです
あ〜〜〜〜、なるほどねぇ…
お気に召しましたか?
いや〜〜〜〜〜〜〜…私どちらかというと美しいオバケというよりは
怖いオバケになりたいんですよねぇ
貞子さんみたいなね
このハイヒールはすごい好きだけど、美しくなっちゃうなら遠慮しときます
そんな!ハイヒールを履いたオバケだって十分怖いですよ!
いや〜、ちょっとねえ
またしても売れなかった
前回の反省を生かし、オバケ用のハイヒールという商品に対して【20代後半・女性・少し勝気・こだわりの強い・生活に余裕がある・オバケ】という適切なターゲットを選択したにも関わらず、またしても結果を出すことができなかったタキザワ。
一体何がダメだったのか?
そのヒントは冒頭の会話にあったはずだ。
私一応れっきとしたオバケなんで、もう少し怖がってもらっていいですか?
「怖がってもらっていいですか?」そう、彼女はオバケである自分自身にプライドを持っており、怖がってもらいたいという欲求こそが彼女の消費者インサイトだったのだ
しかしタキザワはそこを見誤り、このハイヒールを「美しくなりたいすべてのオバケの皆様にお届けしたい一品」というキャッチコピーと共に紹介してしまった。これは完全なミスであり、今回の敗因はまさにここにあったのではないだろうか。
事実、最終的にこのオバケは「私どちらかというと美しいオバケというよりは、怖いオバケになりたいんですよねぇ」と漏らしている。よってこの敗因は確定的。
何よりもったいないのは
ハイヒールそのもの自体は捉え方次第ではいくらでもオバケの怖さを増幅させるためのアイテムになり得るということです。
西洋のホラー映画では可愛いワンピースやハイヒールを身につけたオバケなんて山ほどいますし、むしろそのハイヒールを履きながら
「私のこのハイヒール、なんで赤いか知ってる…??(暗黒微笑)」
なんて言おうものなら子供達は怖くて1週間くらいは一人でトイレにいけなくなります。
つまり、オバケ用の赤くて綺麗なハイヒールはそこに顧客のニーズを満たすポテンシャルを持っていたのです。
しかし、愚かなタキザワはキャッチコピーの選択を誤ったため、結果に結びつけることができませんでした。
【まとめ】「ターゲティング」と「キャッチコピー」は大事
というわけで、みなさんwebマーケティングにおける「ターゲティング」と「キャッチコピー」の大切さ、お分かりいただけたでしょうか。
これさえ押さえておけば、これから先。いつオバケにハイヒールを売ることになっても心配はありません。
正しいマーケティングを身につけ、常に消費者のニーズを満たすことで企業として成長し。いつかこの世をハイヒールを履いたオバケたちでいっぱいにしてやりましょう。
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